また、君に恋をする
母親がいなくなると、部屋をあさった。

自分の部屋だと言われても、自分のだという実感がない。

勉強机の引き出しを開けると、小さな包みを見つけた。

中には、ピンクの石がついた指輪。

大事にしていたのだろう。

包装紙やリボンもきちんと畳んで入っている。


「…誰からもらったんだろう?」


自分で買ったのならラッピングはしないだろう。


「俺だよ」


突然の声に驚いて指輪を落としてしまった。

指輪は転がりながらドアの方に向かう。

それを拾ったのは兄、勇人だった。


「俺がプレゼントしたんだよ、この指輪」


いるはずのない兄がいる事にも驚き、茫然としていると、勇人は悲しそうに笑った。


「本当に何もかも忘れたんだな…」


悲しげな声の響き。

何故だか胸がキュッと締め付けられた様に苦しくなる。

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