キミじゃなきゃ……。
リビングに通じる
ドアの隙間から
顔を覗かせる。

「……お帰り」

お母さんが言う。


「遅いよ」

続いてお姉ちゃんが
少し機嫌悪そうに
言う。


「えっ!?あ、ただいま」

怒られると思って
いたのにお母さんは
笑顔であたしを迎える。

「あんたが帰るの待ってたんだよ?」

リビングの中央にある
テ-ブルには
手をつけていない
カレ-が3つ。

「なんで待ってるの???先に食べちゃえばいいじゃん!!」

「待ってたのよ」

「あ-あ!お腹空いた!ほら、愛理座って。」

あたしは
言われた通りに
ちょっとシックな
椅子に座る。

この席は
あたしの特等席。
1番テレビが見やすい
から、いつも
あたしはこの席。
もともとはお父さんの
指定席だったけど
お父さんがいなく
なってからは
あたし専用の指定席。


さっき
麻衣とカルボナ-ラ
食べたばっかだけど
お母さんやお姉ちゃんの気持ちを考えると
言えなかった。


あたしは
ただ無言で
カレ-を食べ進める。

「愛理、ひょっとして食べてきたの??」

お母さんの鋭い勘。


あたしは
首を横に振る。

「うんん、ちょっとお腹が痛いだけだよ!」

「そうなの……?」

ウプッ……
ヤバイ………。
吐くかも……………。


あたしの胃はもう
食べ物を受け付けない。
せっかくの
カレ-なのに……
残したらお母さん
悲しむ??


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