one.real

絋哉を乗せた電車は、もうとっくに居なくなっていて、気付いた私は白々しく駅を通り抜けた。

外は未だにジメジメしていて、通りを通る人はみんな足早だった。

日曜の夕方。本当なら、ちょっとゆっくりご飯食べようか、とかなるんだろうけど、生憎の天気で人混みはまばらだ。

お目当ての本屋さんも、いつもの日曜に比べ空いていて、試し読みスペースも空席が目立つ。

私は待ってましたとばかりに腰掛けて、気になっていた本を貪って。

今日は運が良いなぁ、なんて思ってしまった。

この後起こる出来事を、想像することすらしないまま。

< 104 / 107 >

この作品をシェア

pagetop