one.real
ありがとうございました――、と言い慣らされた台詞を背中に受けて店を出た。
お目当ての本と、気になった本を数冊買い、私は上機嫌で家を目指す。
雨はすっかり止んでいた。駅から家までは徒歩で約20分。バスに乗ろうかと考えたけど、歩くことにした。
雨上がりの街は嫌いじゃない。
歩道に散らばる水溜まりはずっと続いて、その水面に夕焼けを映す。
街路樹の枝先で揺れる水滴は、緩やかな風に吹かれてキラキラと揺れて。
見上げた空は、切り裂かれた重い雲の隙間から、紅い陽を漏らして辺りを染め上げる。
意味もなく、この光景が好き。