one.real


雨上がりの街は静かで、人通りが少ない。


だから、余計に目に入ったの。

普段であれば気にもしないっていうのに。



曲がり角。

曲がって、数メートル先が我が家。

いつものように、曲がって、…視界に映った、影。

本当に驚いた時、よく小説なんかでは[呼吸を忘れる]って表現するけど、まさにその通りだった。

さっきまで見てた、オレンジに染まる世界は一瞬で色を無くして、呼吸を忘れた私は息苦しさに泣き出しそうになった。



「…憂水?」



そして、聞き慣れない声が私を呼ぶ。

モノクロームの景色の中で、その影だけが色付いて見えた。


< 106 / 107 >

この作品をシェア

pagetop