one.real
雨上がりの街は静かで、人通りが少ない。
だから、余計に目に入ったの。
普段であれば気にもしないっていうのに。
曲がり角。
曲がって、数メートル先が我が家。
いつものように、曲がって、…視界に映った、影。
本当に驚いた時、よく小説なんかでは[呼吸を忘れる]って表現するけど、まさにその通りだった。
さっきまで見てた、オレンジに染まる世界は一瞬で色を無くして、呼吸を忘れた私は息苦しさに泣き出しそうになった。
「…憂水?」
そして、聞き慣れない声が私を呼ぶ。
モノクロームの景色の中で、その影だけが色付いて見えた。