one.real

昼は学生や若い主婦で賑わうこのカフェも、夜はカップルやOLの姿が目立つバーになる。

照明の落ちた薄暗い店内をカウンター目指して進む。

黒いシャツに細いストライプの入った黒いベスト。
ゆるく巻かれたネクタイと少し開いた首もと。

冷めた表情が映える少し釣りあがった二重の眼、整った鼻筋、薄い唇、

それらがこの店に女性客が多い理由を表してる。

顎で示された金髪の正面、カウンターの席に腰かけると、


『来んのか』


俺の前に真っ黒いコーヒーを差し出しながら、その見掛けに反して割りと高音の濁りの無い声が問いかけて来た。



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