one.real

撮影の合間。
テレビ局の角や楽屋。
会員制のクラブ。

この二年で目の当たりにしてきた光景を思い返したらなんかどっと疲れが出てくる気がした。


『芸能人て面倒そー、お前も大変だな』


思いっきり関わりたくねぇって顔で同情を口にする潤に上手く返せなくて誤魔化すようにタンブラーを揺らした俺は


『なんとか毎回かわしてんけどね。


…マジになる気しねぇよ“碧杜”欲しがる奴に』



そう口にした後で頭に響く落ち着いたソプラノに胸が傷んで、嘲笑った。



“碧杜が好き…碧は?私のこと…”

“好き、知ってるでしょ”

“さぁ”

“憂水は心配性だね”

“乙女ですから”



手を放したのは、放させたのは、俺なのに。


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