one.real
駅前の大きな映画館。広いホールの中は人でごった返している。
今朝から突然降りだした雨の所為か、予想以上の客足に館内の店員さんたちは忙しなく動いていた。
私たちのように最初から映画目当ての人だけじゃなく、天候によってデートプランを変更したカップルや家族連れがチケットや売店に長い列を作っている。
みんな考えることは同じなのか、ここの映画館の前に行った映画館でも、私たちの見たい映画は良い時間のものがすべて売り切れてしまっていて。
最後の頼みの綱であったここも、レイトショーしか空きが無かった。
「ごめん憂水、ちゃんと金曜日に来れてたら観れたかもしんない」
「だから、それは紘の所為じゃないじゃない。練習になったんだから」
「そーだけど、憂水楽しみにしてたじゃん」
拗ねたように空を睨みつける紘哉に苦笑する。