one.real
拗ねていた紘哉の顔がさらに不機嫌そうに歪む。私の笑みはそれを受けて尚更深くなる。
だって可愛くて。
行きたがってた私よりも残念そうな顔をして空を睨むなんて、子供みたいだったから。
その表情を見ていたら、私の残念な気持ちなんてどっかに行ってしまった。
私の楽しみにしていたものを一緒に楽しみにして、共有してくれているんだと思ったら、十分満たされてしまった。
「なにさらに笑ってんの、どうせガキみたいだとか思ってるんでしょ」
「そんなことないない、大丈夫」
「…絶対嘘。憂水が大丈夫っていう時は大抵嘘ついてる」
「ほーら、いつまでも拗ねていないでどっか行こう?お腹空いちゃった」
「……」
「行こ?」
拗ねていたとしても、こうして私が歩き出せば不機嫌そうにしながらも、手を取って隣に並んでくることを私は知ってる。
「紘?」
「……」
やっぱり意地を張って、決して私の方を見ようとはしないことも、私は知ってる。
だけど、
「…大通りのカフェ、美味しいらしいから、…そこ行くよ」
結局いつでも私を最優先してくれることを、私は知ってる。