左手の約束


結局あたしはまた泣いてしまった。


お母さんは、よしよしってあたしの背中を撫でる。


「そう言えば…
昔はしょっちゅうこうしてたわね。


…“かえでくん”だったかしら?」



あたしは思わず顔を上げた。


「覚えてたの…?」


「そりゃあね。
あの頃は毎日泣いて大変だったのよ?
かえでくんの所に行くーってね」


あたし…そんなんだったの?


「ふふ(笑)

大きくなったら絶対に逢いに行くからもう泣かないって

ある時突然言い出して。
それから少しずつ泣かなくなったのよ?」


「え………」


そんな事覚えてない…







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