左手の約束
あれから
クラスが遠い事もあって、楓くんの姿を見る事はなく。
楓くんの話題はよく聞くけど…
“クールでカッコイイ”
……クール?
“運動神経が抜群”
……昔からそうだったよね。
“成績優秀”
……編入試験も楽々だって。
“彼女がいるらしい”
……だよ…ね…
あたしの事が分からないくらい昔の事で
覚えてるのかすら解らない。
たとえ覚えてたとしても、あたしみたいにいつまでも
引きずってるわけないよね……
そんなふうに
いつの間にか
“過去”にしようとしてた。
いまさら行動しようなんて
勇気もない。
あたしは心にしこりを残したまま
行き場のない気持ちに動揺してた。