左手の約束
ドクン
ドクン
ドクン
楓…くん………だ……
あたしはまだ顔を上げられないでいた。
だけど
わかる。
あの頃とは変わってしまったけど
この声は
確かに
楓くんだ…………
「違った?」
その声にあたしは慌てて首を左右に振った。
「あり…がとう…」
再会して初めて発した声は酷く掠れて
未だに煩い心臓の音で自分でも聞こえないくらいだった。
楓くんの手からあたしの手へと戻って来た指輪。
「それ…オモチャだろ?」
あたしは下を向いたまま頷いた。
「アンタ、変わってんな…」
解っていても……ショックだった。
もしかしたら、この『ゆびわ』を見て
あたしの事を思い出してくれるかもしれないと
まだ淡い期待を抱いてた自分が
惨めだった。