左手の約束
夢じゃなく
今日は月一回の学年集会の日。
あたし達は体育館へと続く廊下を歩いていた。
「もうさぁ、いっその事昔の事話して覚えてる?って聞いてみたら??
記憶に少しは残ってたりするんじゃない?」
「はは…
無理だって。覚えてるわけないよ。
それに…楓くんにとって、あの頃の事がいい思い出とは限らないし」
引っ越した原因は…両親の離婚だから
決して楽しかったってだけじゃないはずだし…
あたしの知る限り、この高校には
あの頃同じ保育園に通ってた人はほぼいない。
…あの頃の楓くんを知る人はいない。
だからもう
昔の思い出は取り出さない。
あたしは今の楓くんが好きだから…
口が悪くて
優しい
楓くんが…