左手の約束


志保が立ち上がり、制服に着いた埃を掃う。


どうやら探し物は見つからなかったらしい。


やっぱり…コレ…か……?


少し色あせてしまったけど、俺の手の上で鈍く光るモノ。


迷った末、俺は志保の前に指輪を差し出した。


「これ…?」


俯いてる志保は、指輪を凝視して動かない。


「違った?」


そう言うと慌てて首を振って受け取った。


「あり…がとう…」


掠れて出てきた声は少し…震えてるようで。


そしてとても大切に指輪を握った。



…………痛い。


胸が締め付けられる。


「それ…オモチャだろ?」


そんな気持ちを隠すように…俺は続けた。



「アンタ、変わってんな…」



それだけ言って俺は歩き出した。



……これでいい。

もう関わらない。


そう決めたはずなのに。




背中に感じる志保の視線に


……また


胸が痛んだ。










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