左手の約束
俺は
“大切な人”なんていらない。
そうすれば
いずれ来るかもしれない“別れ”を恐れる事もない。
“逃げ”だって解ってる。
だけど…それでも。
そうやって俺はいつも境界線を引いていた。
あの……指輪。
志保は大切に持っていてくれたのか…
幼いながら“結婚”が永遠だと信じていたあの頃…
小さな俺にはどうしようもなかった出来事に
最後に交わした『約束』
『ケッコンしようね!』
そして志保の小さな指に収まった
お菓子のオマケについてる小さなオモチャの指輪。
ガキのくせに女の子用のお菓子を買うのが恥ずかしかった覚えがある。
―――眩しい。
幸せだったあの頃の思い出が眩しすぎて
俺は目を閉じた。