左手の約束


偶然。


そうだ。ただの…偶然。


そう思うしかなかった。


だけど…

二度ある事は三度あるとはよく言ったもんで……



―――――――


少し遅くなった帰り道、


また…志保の声。



「離してっ」


どうやら同じパターン。


「本当に離してよ…っ」


どうしてこう志保は……


「離せよ。
コイツ俺のツレなんだけど。何か用?」


そう言ってチャラそうな男から志保を引きはがした。


案の定、サッサとその場を去った男。


ハァ………


「またアンタか…」


その言葉に志保が顔を上げた。


「お前、隙がありすぎなんだよ。ボケっとしてるからああなるんだぞ」


少しキツイ言い方。


だけどしょっちゅうこんな場面に出くわすなんて普通ありえない。


たまたま俺が通りかかったから良かったものの

そうじゃなかった時の事を想像したらゾッとした。








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