左手の約束
「……あの頃は一番幸せな時だったから
情けないけど、思い出すたび辛いんだ」
……辛い…………?
あの幸せだった日々は楓くんを苦しめてる……?
「もう嫌なんだ。
大切なものが増えるのは…
だから作る気もない」
「…あの…約束も……?」
もう辛いだけなの?
思わず声に出ていた。
「……志保はきっと幸せになれるよ。
俺の事なんか考えてたら駄目だ」
それは優しい言い方だったけど、あたしに有無を言わさない突き放すような言葉。
ああ…
楓くんはもう違うんだね…
あの場所にいたのは
あたしだけ…