私の中の眠れるワタシ
怪訝そうな私を見て、ゆっくり離れると、
「嫌なら、いいよ。
でも、こういうイヤラシイこともすると、もっとイイんだ。」
と、ニヤリとして頷いた。
その笑顔を見て私は、アカズキンの童話を思い出す。
狼がおばあさんに化けて、アカズキンを食べようとするとき。
いろんな事を聞くアカズキンに、狼はありとあらゆる嘘をつく。
−−『食欲』を満たしたい一心で。
私は、先生が実は性欲という名の『食欲』のために、今だけの嘘をついているのではないかと、疑ってしまう。
ホントに、ホントに、助けてくれる?
身体と自由は引き換えになる?
「どうして、困った顔をするの?
長崎は、僕の事、キライかい?」
キライなんて、そんなはずない。
もう、去年の秋からずっとこうして車の中で二人きりになってみたかった。
だけど……
先生なら、クラスの男子と違うからという安心感が。
そして、私が探す安住の世界と、今、交換になっている私の身体が。
先生が好きだという気持ちまで、グラグラと揺さぶっているように、感じた。