私の中の眠れるワタシ


−−目がさめると。

いつもの自分の部屋だった。


机に突っ伏して寝てしまっていたようだった。私の顔の下で、書きかけの手紙が、涙とよだれでグチャグチャになっていた。

もうやめよう。今は。

こんな夢のあと。
私は昨日までの幸せな決意、そして好意を寄せる女生徒からの『助けて』という言葉で気を引く事で、先生なら助けてくれるだろうなんて甘い考えをもって、先ほどまでの文面に、言葉をつなげる事ができなかった。

手紙を四つに折って、ごみ箱に棄てる。



『信じる強さを持てるということ。
恋が実るとは、そういうことだと思う。』

あの時そう言って美月は微笑んでいた。


彼女は、初めての男性を信じ、でも最後まで自分への愛情は信じきれずに、身体に跡を残してもらう事で、信じようと努力した。

こわかっただろうな……

そのうち、ただ身体を捧げる事に夢中になって、その『跡』を見ることで、『愛』とした。


なにもかも、信じる事はできないはず。

自分の母の事も、同じように信じられないだろう。

いや、それ以上に。
数時間前まで母親と愛し合っていた男を、どうやって信じればいいのか。


それでも彼女は今、そんな恋をしたあとも、

『信じる強さを持てる事が、恋を実らせる』

と言った事には、大きな意味があるのかもしれなかった。



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