私の中の眠れるワタシ
「交換条件で、俺の頼みを聞いてくれよ。」
ちょっと意外だった。
昔の真也なら、すぐさま母にその手紙を持って行き、散々ある事ない事を吹き込んでは母を煽って……
私は明日、長袖のブラウスで登校する羽目になるはずだった。
「……何よ。」
渋々耳を傾ける。
「ねーちゃん、誰にも言うなよ。
あのさ、俺……
ねーちゃんが一緒に組んでいるテニスのペアの人いるだろ?あの人の事、好きなんだよ。」
「えーー?!真也が??ムリムリ、やめときなよ。」
「それでさ。もう付き合ってるんだ、俺達。」
俺達。『たち…?』その響きに違和感。
「サナミは、俺の彼女なの!」
私は、驚いて部屋の壁によろよろと手をついて座りこんだ。
「嘘でしょ……?いつの間に?なんで?そんな様子、なかったじゃん。」
「ねーちゃん、気付かなかっただけだよ。俺達もう何度も一緒に部活帰り下校したぜ。」