私の中の眠れるワタシ
弟が、手紙を持ったまま部屋を出ていこうとした時。
一つだけ、どうしても聞きたい事があった。
「サナミには、私が知ってる事、言っていいの?」
真也は足を止めて振り向き、
「それは、ねーちゃんがサナミに直接打ち明けられてからじゃねぇ?俺は、ねーちゃんに話したって事は言っておくけど。ま、ゆっくり待つこったね。」
と言いながら部屋を出ていった。
彼氏、彼女、カレシ、カノジョ……
なにそれ。一体、世の中はどうなっているのか?
私が知らないだけで、人は皆、恋をして、誰も知らない顔を持っているのか?
美月だけが特別な気がしていたけど。
皆、誰かを欲して、秘密を持っている……?
兄弟でも、毎日一緒に練習をした気のおけない仲間であっても。
そんな身近にいる私にすら、気付かれないように、『秘密の逢瀬』を重ねているの?