私の中の眠れるワタシ

それでもサナミは、あの約束を覚えていて、

「蜜、休み続いて悪かったね。この前の話だけど。今日もできれば、一緒に帰りたいんだ……」

私は黙って帰る用意をした。

二人で並んで歩く。

先に言葉を発したのは、サナミだった。

「私ね、真也くんと付き合ってるの。
黙ってるつもりだったわけじゃないよ。そのうち、きちんと話そうって思っていたし。」

「ねえ。付き合うって何。」

私の本音だった。今、『付き合ってる』という人から聞いてみたいと、ずっと思ってた。

サナミは少しだけ考えてから、はっきりとした口調で、

「片思いが、実って。同じ気持ちだってわかって……一緒にいる事が、二人とも楽しいって事かな。」

「で、何するの。」

「え?何って……やだ、変な事想像しないでよ。」

私は一人で照れるサナミを、気持ち悪くなりながら見つめる。

「あのさ。
私、あんたと違うの。先生の事、どうしようとも、思ってない。
サナミの付き合うってものが、何かはよくわかったよ。
でも、どうして同じ気持ちだなんて、言い切れるの?心と言葉に、裏表ない人ばかりでは、ないよ。真也が、サナミと同じくらい好きなんてさ。何を根拠に、そう思うの。」

あまりに冷たい私の言葉に、サナミは絶句する。



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