私の中の眠れるワタシ
黙り込む私に、先生が、
「よし!それじゃ家まで送ろう。」
と、明るく言った。
「あ、でも先生やることがまだ残ってるって……」
「ああ、持ち帰るよ。
いいんだ。たいした量じゃない。それより、こんな暗いのに、一人で帰して何かあった時のほうが、大変だからな!」
たしかに、外はもう、真っ暗だった。
私は、結構ですと言えない自分がいやらしく感じてしまう。
−−はじめからこれを、期待してたクセに。
自分で自分に、毒づく。
私がなにも答えなくても、先生はそれが最初から当たり前だったかのように、帰る支度を始めた。
私は、制服のリボンを結び直したりして、恥ずかしいのをごまかす。
「行くぞ!」
私は、トコトコと着いていく。
職員室の電気が消され、鍵をかける。
その馴れた手つきを見れば、先生がよく最終下校をしている事がうかがえた。
「悪い、見てこなくちゃ行けないところがあるから、先に行っててくれ。
職員玄関から出ろよ!」
走りながらそう言って、廊下の奥の闇にいなくなった。