私の中の眠れるワタシ
言われたとおり、職員玄関から出て、駐車場に向かって歩く。
車は、一台だけ。
もう、先生のしか残っていない。
私は、窓から中を覗く。
……この車に、美月が乗ってる?
ぐるぐる車の周りを回る。後部座席に、何かヒントがないか、助手席には?
探偵気分だ。
だが、結局なにもないまま、諦めた頃、先生が来た。
「待たせたな。よし、じゃ乗れ!」
ドアを開けると、その瞬間。
何処かで嗅いだ事があるような香りが流れ出してきた気がした。
香水?何処で…?
どうしても、思い出せない。でも、女性らしいこの香りは、先生のものではないように思う。
まるで、先生の帰りを出迎えるように、車の中でじっと待つ、この香り。
これ自体に、生命が宿っているような、不気味な錯覚までしてくる。
私は、何も言えずに乗り込んだ。