私の中の眠れるワタシ
「今は、好きな人いるし。……先生の事も、好きですけど。先生として、だと思います。」
あくまで、他にもう好きな人がいるという前提を、やめる事ができなかった。
これで、今から先生に、フラれることはない。
迷惑に、思われる事もない。
「……そっか。」
寂しそうに聞こえたのは、気のせい?
その心の中の問いかけに、答えがこんなに早くでるとは思わなかった。
「俺からも、話したい事があったんだ。
でも、長崎の気持ちがわからないから、ずっと迷ってた。
もしかして、俺の事好きなのかなって、少し思った事、あるんだ。
去年の……秋をすぎたころかな。
だから、ずっと聞いてみたかった。
今日で、お互いスッキリだな。
もう違うなら、おまえに、相談したかった事があるんだ。」
−−違うなら、したかった相談?
嫌な予感がした。
久しぶりだ。
こんなに胸騒ぎがするなんて。
鼻につく、香水の香りが強くなった気がした。
あぁ……そうだ。思い出した。
この香りは、美月の家の玄関で、少しだけ開いたドアの隙間から漏れだしてきた、あの香りじゃないか。