私の中の眠れるワタシ
この一年で、ワタシはできる限りの事をしてきたはずだった。
先生と、恋を実らせたいわけじゃない。
それだけは、諦めてた。
だから、決めてた。
じゃ、何がしたかったんだろう。
−−ワタシは、逃げたかったんだ。
ここから。
この家から。
母を憎み、弟を憎み、自由になりたかった。
せめて、心だけでも、と。
ワタシの『心』は、自由だ。誰にも縛られない、ワタシだけの先生、ワタシだけの世界。
いつでも、そこへ行けた。いつか、本当に先生が迎えにくる錯覚。
それだけでよかった。
この世界が、なくならない事だけが、本当のワタシの望みだったのに。
真実を知ることばかりが、大切ではないのだ。
恋をしていた私は、もうひとりのワタシだった。
現実はただ、逃げ場となる世界がほしかっただけ。これは、恋と言えたのか?
皆は、何が欲しいのだろう。
本当は、誰でも。自分じゃない自分になってみたいだけじゃないのか。