私の中の眠れるワタシ
三十分ぐらいは探しただろう。
ワタシは、固い革をみつ編みにしたようなブレスと、細いゴムにビーズが通されているブレスを三本選んだ。
わりと傷も隠れている。これから来る夏も、なんとかなるだろう。
この買い物に、満足そうにしているワタシを、颯生は嬉しそうに見つめる。
「よかったね、良い買い物ができたね。」
颯生は、中学二年生の英語の教科書を、そのまま和訳したような言い方ばかりする。
いつも、なにか物足りないが、間違ってはいない。
カンに障る事もない。
母親と、幼い子供の会話のようでもある。
ワタシは、いつの間にか、幼い子供のように扱われているようだ。
でも、嫌ではなかった。
ワタシの頭からは、手首を経由して、たくさんの言葉が、溢れて、漏れて。
消えていた。