私の中の眠れるワタシ
「ただいま。」
玄関には、仁王立ちをした母が待ち構えていた。
まず一発、ビンタだ。
顔には、跡が残る程の怪我は、まだない。
だから、これまでは、良かった。
だが、母は、私が部活で遅くなっている事をどのように説明しても、
『乱交パーティー』
と、捉えていた。
今日は、確実にいつもより怒っていた。
手に、ハサミを持ち出す。
まさか……嫌な予感。
今日は、はっきりとわかった。
「お前が好き勝手出歩くのは、洒落こいて、色気づいてるせいだな。
その髪から、メチャクチャにしてやる。」
私は玄関の方へ身を翻す。
しかし。肩より長く伸ばして、巻いていた髪は、私の予想より母の手の届く距離だったらしい。
後ろから、毛先を掴まれ、徐々に根本を手繰り寄せた。
「イタイ、イタイ、やめて!!」
痛さより、切られる事の恐怖感。
頭皮に、冷たいハサミがあたる。
……はっきりと、ハサミが髪を断つ音が耳元で、した。
根本から二カ所。
他の髪では、隠しようもない場所が、バッサリ切り落とされていた。