私の中の眠れるワタシ

ある日、ぐったり疲れて練習から帰ると、

「今日はなんの日か、覚えてるかい?」


彼は、どこかに隠してあったケーキを嬉しそうに出してきた。

「え?誕生日?」

「ちーがーうーよ。二人が付き合って、一ヶ月なんだよ!」

あ、本当だ。正確な日付までは覚えてなかったが。
家を出てからそのくらいには、なっていた。

「オレ、記念日をお祝いするの、大好きなんだ!」

「へえ、男なのに、マメだね。感心、感心。」


興味なさげにタバコを吸っている自分に気付き、慌てて火を消した。

「そ!それで、ケーキ。酒もあるぞ!!」

「いいね。乾杯しよ。」


……ホントは今日、飲みたい気分じゃなかった。
最近スランプ気味で、ダンスが上達しない。
イライラしていたし、その時のパートナーとも、上手くいってなかった。

練習中も、一方的に私のミスを責め立てる人で、私が足を引っ張っていると男同士で愚痴をもらしているのを、今日、偶然聞いてしまった。

その場に、三宅ちゃんもいたから、おそらく知っているだろう。



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