私の中の眠れるワタシ

浴室




台所、洗面所、バスルーム、ペンケースの中、机の引き出し。

ありとあらゆる所を探したが、見事なくらいどこにもなかった。


最近のワタシを見て、先手を打たれていたようだ。

刃物の類が、部屋から忽然と消えている。

もうしばらく、台所に立つ事はなく、包丁すらも握っていなかったから。

台所から小さなナイフと、フォークのはてまで隠されているとは知らなかった。


「ない、ない、ない、ない、ない、ない……」


譫言のように呟きながら、二間しかない狭いアパートの部屋をうろつく。

携帯を手にとる。

隠した張本人である颯生に電話するためだ。

仕事中の筈だ。

出てくれるまで、何度でもかけたっていい。
とにかく隠した場所を聞かない事には。




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