私の中の眠れるワタシ
ケーキにロウソクを立てる。一本だけ。
「これは、なんのためのロウソクなの?」
三宅ちゃんは、誇らしげに
「毎月、増やしていくんだよ。一本ずつ。一年で、十二本になる。
月に一度くらい、二人でケーキをワンホール食べる日あっても、いいだろ?」
そう言って、照れた。
甘い物も、そんな甘ったるい提案も苦手。
私がここにいるのは、『今』だけだ。
彼に好きな人が他にできたら。
いつだって、何も言わずに去ってあげられる。
次の家が見つかるまで私は、彼の優しさにつけこんでここに住み着く予定だが。
彼を喜ばせるのは身体だけに尽きてしまうけど、私の『自由』のためなら、なんだって捧げて構わないのだから。
ロウソクの火が消されて、真っ暗になると、彼は手探りで私を抱き寄せ口づける。
私は暗くて見えないフリをして、そっと顔をそむけ、唇をはずした。