私の中の眠れるワタシ
居酒屋は誰にも見つからないような場所を選ぶ。
別にやましいわけじゃないのに、この秘密めいた感じに、互いにドキドキした。
二人で、今日までの練習が、いかにやりやすかったか、褒め合う。
「俺、はじめの頃、蜜が苦手でさ〜。」
「私も嫌いだったよ。なんか話しかけにくいしね。プライド高そうだし。」
「なにー!?
でもさ、まさかこんな順調に練習できると思わなかったよな〜。」
「ね。私、尊敬してるから。ソウタの事は。」
同学年同士の会話で、尊敬は効果的なはずだ。
「ねぇ。私、ハッキリ言っておきたい事があるの。」
突然の真剣な眼差しに、ソウタはドギマギしていた。
「私、ソウタに指名してほしい。三年になる前のカップルを決める席で。」
ソウタは、手元のグラスに残るカクテルを揺らして、目をそらした。
「迷ってるのは、わかってる。千晶でしょ?千晶と組んだ人は不思議と勝つもんね。
だけど、お願い。今度の大会で、勝ったら。必ず私を選んで。」