私の中の眠れるワタシ
「この前。五度目の記念日だったんだよ。蜜に何度電話しても、出てもらえなかった。」
私は、すまないと思うより先に、内心ドジったなぁ……と舌打ちした。
「ごめんね。あの時、ちょっと実家に帰っててさ」
イチヤは、それ以上何も言わなかった。
いつもどおり、彼を優しく抱きしめる。
でも、イチヤの腕が、私を抱きしめかえす事はなかった。
−−ベットに入った後。
真っ暗で静か。もう少しで眠りに落ちるところだったのに、突然イチヤが、
「蜜。話してよ。本当の事。」
と、呟いた。
私はイチヤに背中を向けて、寝たフリをする。
そのまま、静けさがまた続いたが、今度は涙声でこう言った。
「オレ、一度も蜜がオレに好きって言ってくれた事がないの、わかってるんだ。」
私は、ドキリと心臓が止まるかと思った。
そうだ、ワタシは一度もイチヤの好きだよという言葉に、応えてあげた事はない。
その事を、やはりイチヤは気付いていたんだ。
ワタシは振り向いて、イチヤを抱きしめた。