私の中の眠れるワタシ

月光




−−−十月。
掃除当番が終わると、すぐに教室を飛び出した。

一昨日までの嵐も去り、クレイコートはもう落ち着いただろう。
今日は朝から太陽も降り注ぎ、教室の机も、火傷しそうなほど暑く照らされていたのだから。

テニスコートには、もう一年生も来ているかもしれない。
私は急いで職員室に向かった。

今日は、顧問の相田先生も職員会議でコートに姿を見せるのは、遅い。

三年生が先日引退したばかりで、私が部長に指名されてからまだ日は浅かった。
軟式テニス部の部長は代々、顧問からの任命制だった。

本人に、余程の事情がない限り、断る事はできない。
私に関しては、断るどころか、
『私がやらなくちゃ誰が出来るんだ』
という、熱い独りよがりな責任感が心の中で渦を巻いていた。



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