私の中の眠れるワタシ
腕を掴まれながら、通り過ぎる私達をイチヤは見ている。
だけど、イチヤにも助けを求められない。
イチヤに目で追われながら私は、学校を後にした。
歓楽街も後にして、ズンズンとホテル街に入っていく。
その間、彼は無言だ。
私も、何も聞かない。
どこに行くの、なんて愚問だ。
いつも使っていたホテルまで来た。
彼は全く躊躇する様子もなく、私の手を引いた。
ホテルの部屋に着く。
私は、ベットの端に腰を降ろした。
その間彼は着ている物を脱いでいく。
「話は?ねえ、脱がないでよ。」
「蜜も、脱げよ。脱がせてやる。」
私は伸びる手をかわして、ソファに座った。
彼は追うように、私の隣に掛けた。
「俺、もう何も無くす物なんて、ないんだ。」
別れた事を言っているのだろう。
「私だって、ないよ。」
彼は意外そうに、私を見た。
「え?お前、三宅と……」
「別れてないけど。」
落胆したように、俯いた。