私の中の眠れるワタシ

鎖を解いてカゴの扉を開き、蜜は行きたいところに行くんだよと見送る彼に。

ワタシは振り向く事も、バイバイと、呟く事もできない。


そんな不自由もあったのだ、今更になってわかっても、もう手遅れなのに。



「蜜、こっちをむいてごらん。」

私は、彼の広い胸の中で丸くなり俯く。
おでこをなぜながら私の顔を持ち上げると、視線は首でとまり、

「ああ。首に、赤い華が咲いてるみたいだよ。
悔しいけどさ、蜜。
……綺麗にクッキリついてる。
オレはソイツの事、許せないけど、蜜が幸せになれるなら、蜜の事は許したいんだ。」


彼に許される私を、きっとワタシは許せない。
だけど、

「今日の夜は、もう私、行かなくちゃ。一緒にいられないの。」

彼は、それでもしかたないねと言って、私を抱きしめたら、


「泣かないでよ。オレのほうが泣きたいよ?

蜜は、これから幸せになれるよ。次はきっとスキって言ってあげられるよ。」


そう言って、いつか聞いた曲をかけた。



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