私の中の眠れるワタシ
−−この曲は。
そうだ。初めて彼と一緒に朝を迎えて、あの時ラジオから流れてた歌だ。
「探したんだ、オレ。
ラジオで聞いて……その時もう蜜は寝てたけどね、いい歌だなぁって思ってさ。
お店で鼻歌を歌って、店員さんに探してもらってさ。
なーんか、思い出に残ってるんだよねぇ。」
「マイラバのDISTINYでしょ?」
「なんだ、蜜、知ってたの?蜜に聞けばよかったなぁ。」
本当に、私に聞けば早かったのに。
それにあの時、まだ寝てはいなかったよ。
だけど、そんな昔話、二人で懐かしんで話す余裕なんて、しばらくなかった。
−−それよりも、ワタシはこの家に、いなかったんだ……。
「運命って、あるなってさ。
蜜とは、初めからこうなる運命で、オレはそれ、必死にねじまげようってしてただけだった。
ケーキのロウソク六本分もね。
蜜のホントの気持ち、もっと早くから気付いてたのに、ごめんな。」
彼は、独り言みたいに言った。
ワタシの裏切りを、『運命』なんて言葉で片付けないで。
私はワタシと、あまりに痛み、抱き合って泣くのだから。