私の中の眠れるワタシ
氷と炎
ソウタの家に着く頃には、もう空は暗かった。
住み慣れたイチヤの家を後にし、この夜からは、ソウタの家がワタシの新しい住み家だ。
−−イチヤとは終わりが近い。
なんとなく、そんな気がしてたから、手荷物一個で部屋を出られるように、気がむいた時に荷物を少しずつ部室に移動させていた。
小さなバック一つ分の荷物をイチヤの家でまとめていた時に、あらためてワタシのしたたかさを知る。
……ポケットが震える。
ソウタから、着信だ。
「蜜、今どのへん?」
ワタシがイチヤと別れ、自分の部屋に向かっているという事に、喜びを隠せないようだった。
「もう、近いよ。」
早く来いよ、それだけ言うとすぐに電話は切れた。
玄関の前までくると、チャイムを鳴らすより先に、ドアが開いた。
「来たよー」
ワタシが言うか言わないかのうちに、腕を引き抱きしめられた。
「俺、やっと。おまえと。これからずっと……」
感極まり、彼は泣き出した。
今日は一日、涙と縁があるらしい。