私の中の眠れるワタシ
肉ジャガができあがって、彼はそれを美味しそうに食べた。
思えば、二人でちゃんとした食事なんてした事なかった。
彼の好き嫌いも私は知らない。
どこにも一緒に遊びに行ったことないし、いつも人目を忍んで明るい場所で会った事がない。
私はつまり、夜の密会と一緒に練習してたあの一ヶ月ほどだけで、また新しい居場所を手に入れた。
彼とは、カップルを組まなくなってからは、部活中も話さなかったし、話したい事もなかったわけだし。
−−それでも。
彼は私を選び、身体を『取引』に使っただけの私より。
映画に行ったり何度も食事をしたり、おうちの事を一生懸命やったり、私よりずっと何度も多く夜を共にしたはずの彼女を、あっけなく捨てた。
−−どれだけ愛されていても、容赦なく自分が愛する方を選べる。
ソウタは、そういう人だ。その事実は、変えられない。
ここにも、私が探しているものは、ないのだろう。
探りあてられ、求められることはあっても。