私の中の眠れるワタシ

「どうしたの?これ。」

フタを開けて、手首に噴きつけてみる。細かい、霧が肌に拡がり、香りが立ちのぼる。

香りは、初めてかいだ。
トップノートは爽やかな、ひんやりした香調だ。
柑橘系?男性がつけても、甘くなくて良い香りだった。


「香水屋で、俺用の新しいやつ、探してたんだ。でも、この香りかいだら、なんかお前にピッタリだと思って、ついね。」

私は、手の中でそれを何度も回し見た。


キレイだ。ガラスの香水ビンは、透明な太いキャンドルみたいで、消えない炎が氷の中で燃え続けていた。


広告をみた時、衝撃的だったから、私はこれを覚えていた。

ビンの形や、かいだ事もなかった香りよりも、私を引き付けたもの。

それは、そのキャッチコピーだった。



−彼女は、氷。
    彼女は、炎。

   EAU TORRIDE<オートリード>−




< 240 / 433 >

この作品をシェア

pagetop