私の中の眠れるワタシ

「いい香りだね。ありがとう、大切にする。」

「大切に、毎日つけろ。その首にも。手にも。」

そう言って、また私の手首を掴み、引き寄せた。

……もう目つきが、変わってる。

私は諦めて口づけを受け入れる。


−−また、始まるんだ。


彼の目は、私の首筋に残る赤い跡に釘づけだ。
今朝まで、自分が何度もつけたもの。

なのに、それにすら嫉妬する。


「これは、三宅がつけたものか?」

「違うでしょ、今朝までソウタが何回も……」

それ以上、私に口を聞かせない。


どちらだって、彼には関係ないのだ。
前日の自分にまで嫉妬する事で、より深く私を愛そうとするのだから。


私は咎めない。
そう、それでいい。
そして、このままここに、ワタシを置いて。

どこにも、もう、帰れない。ワタシの家は、今日からソウタ。



< 241 / 433 >

この作品をシェア

pagetop