私の中の眠れるワタシ

「ま、あんまり考えないで、感じたとおりやるのも大切だよ?本番当日が一番楽しいっての、勝つ秘訣だよ〜!」

そう言って別の後輩を見に行ってしまった。


−−いいなぁ、あんな余裕ほしい。



鏡にむかって一人練習する私は、なんとも難しい顔をしていた。

これじゃ、ダメだな。

そんな自分を見て、笑ってしまった。


ソウタも真面目に練習してる。なんとなく、声をかけにくい雰囲気だ。

そんなソウタも、嫌いじゃない。

一生懸命な人は、他人を寄せ付けない強さやプライドみたいなものを滲ませる時がある。

セツナさんもそうだ。

普段ニコニコしてても、やっぱり曲がかかると顔付きが変わり、偶然そばで踊っていた時も、目が合うと逃げたくなるような威圧感を与えるときがある。

それが格好よかったし、私も目指すところ。

どんなに飲み会やプライベートで後輩とふざけても、踊り出せば誰もバカにしたり笑う者はいない。

セツナさんに圧倒されて、場所を空けてしまうのは、先輩達ですらそうだった。



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