私の中の眠れるワタシ
セツナさんには、不思議な事に男性との噂が一度もない。
もう三年生だというのに、一年生の時から全くないという。
でも、そんなはずはないと私は思う。
−−ダンスの表現力に、恋愛の経験は不可欠。
それは、私の持論だった。
私自身、恋愛できているかと言われると疑問だけど、まあ、肉体関係はそれなりにあるから、自信を持つ事にする。
四拍子でゆったりとした曲調のラブソングで踊る、『ルンバ』という種目がある。
これが上手に見えるとセクシーに感じるのは、『ルンバ』で表現するものが、男女関係の悲喜こもごもだったりするから、私は恋愛を恐れながらも、常に憧れていたのかもしれない。
その証拠に、ソウタとは『ルンバ』の成績が一番よかった。
彼の呼吸が耳にかかるくらい近づいたかと思うと、一気に遠ざかり、互いを見つめ合う。
この遠近、緩急を付けた動きが、観客に興奮を与える。