私の中の眠れるワタシ

ソウタとカップルを組んでしばらく経つと、少し慣れてきたのか、練習中も話しかけてくるようになった。

とくに、二人で踊っている時が多くて、ルンバの練習中に私達の体の距離が近づくと、耳元で

「あー、今すぐヤリたくなってきた。」

と、呟いたりする。

私は呆れて、

「バカ……」

としか言えないが、彼が充実した恋愛をし、イキイキしているのは見ていて楽しかった。

彼の恋が人ごとな自分自身は、笑えなかったが。

相変わらず、夜は強引だったりワガママも多かったが、以前よりは私を気遣い、いたわるようになったような気もする。

でも、私はイチヤの事があって、イチヤを傷つけた苦しみも実は、長く尾をひいていた。

だから、ソウタにのめり込む事はできなかったし、やっぱりイチヤの時と同じく、『好き』と言ってあげる事もできなかった。


身体を使ったしたたかな事はいくらでも出来るのに。

現在進行型で好きだという事に、なぜか抵抗があった。



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