私の中の眠れるワタシ
明かりを消して、布団に入る頃には。
私はセツナさんともう何度もこうしてきたような錯覚をした。
「蜜……」
暗闇の中で聞く、セツナさんの声は、明るいところで聞くどんな呼びかけとも違うような、なまめかしさがあった。
「はい……」
私は、ドキドキして、彼女に触れる事ができない。
背中の体温も、すぐ側で感じているのに、なぜか触れないよう、慎重に。
熱が、かろうじて伝わってくるような、細い隙間を作る事に専念した。
「谷田の事だけど」
−−もう、やめなよ。
彼女は、はっきりそう言った。
私は、彼女が、根拠もなくそう告げる事に、すっかり安堵して……
彼女の気をひくために。
「もう少し、頑張ってみますね。どうなるか、わからないけど……。男なんて、安っぽいから」
これで彼女は、いつかのソウタのように、どうしようもない想いをいつか私にぶつけてくれる。
そう、感じた。
そっと腕を絡めると、彼女はもう眠っていた。