私の中の眠れるワタシ

知らないうちに、ワタシの心の中に『悪意のない悪魔』を飼っていたんだ……。

セツナさんの気を引くために、谷田さんを利用していた。
そして、無神経にもセツナさんの彼と犯した罪を彼女へ暴露した。

知らなかったでは、済まされない。

ワタシは彼を好きでもなかったのに!

最後には、セツナさんの幸せを壊して……

ワタシの恋のために、彼女の恋を犠牲にしたんだ。



「ごめんなさい、ごめんなさい、ワタシ、知らなくて、ごめんなさい……」


セツナさんは、泣いていたけど、許そうと頑張っている。笑顔が、見えたもの。
私こそ、と自分の罰をワタシに訴えてた。




−−なのにワタシは。

「谷田さんの事は、好きなわけじゃなかったんです。ワタシ、本当は、本当は……」




−−消えた。

完全に、セツナさんの瞳から、温もりが。

優しさも、同情も。

谷田さんも、ワタシも、みんな消えた。



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