私の中の眠れるワタシ

リフレイン




「これは、GIVENCHYの<オートリード>といいまして……
マンダリンやベルガモットといった爽やかな柑橘系のトップノートから」

私は手元の試香紙を振りアルコールを飛ばす。


「徐々にバンブーやサンダルウッドといった温かく温もりのある香りに変化していくんですよ。」

彼女は、鼻を近付けて頷く。

「発売当初は、『彼女は氷、彼女は炎』というキャッチコピーが、多くの女性の関心を集めたんですよ。」


宜シケレバ、コチラ、オ試シ下サイ。

そう言って私は、ハリツケタような笑顔で、にこやかに彼女を見、試香紙を手渡した。


二十代前半くらいの、髪の長い綺麗に化粧した女性はうっとりと、その香りと自分のイメージしたいジブンを重ね合わせている。


−−懐かしい。あれからもう、四年も経った。



やはりこの香りを嗅ぐと、私はタイムスリップしてしまったかのように、あの頃を思い出す。

この仕事の欠点は、これ。



−−ソウタと千晶は、昨年結婚した。



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