私の中の眠れるワタシ

「このビン、きれいですね〜!!」

「ええ。氷の中に閉じ込めた炎をイメージして作られました。
発売してから人気の変わらない、リピートされる方も多い香りです〜」

じゃあこれ下さい、と言って彼女は会計を済ませた。

私は店舗の紙袋に箱を入れ、彼女に手渡す。

後ろ姿を見送り、昔の自分を重ねた。



私は、ビンの一つひとつがどれも意思を持ったヒトのような錯覚をおぼえる。

フレグランスという『ヒト』と人が出会う場所に立ち会う。

そこで、結び付ける。

これが、今の私の仕事だ。

フレグランスがなければ、生きていけないという人はいない。
生きるためにどうしても必要な物ではない。

それでも、何故求めるのか……。

私は、今まで鼻についていた、オートリードの香りを消すために。

店舗に置いてあるコーヒー豆の入った小ビンに鼻を近づけた。



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