私の中の眠れるワタシ

いつも、私は売場にいる時とプライベートでつける香りを分けていた。

売場では、必ず一番新しい香りを自分の好みに関係なくつける。

新商品は、発売時が勝負だ。
大量に在庫を仕入れている。
拡大販売−拡販−は、欠かせない。
並べる場所を多くとり、人目につきやすい特等席にピンクのかわいらしいビンをディスプレイする。

この甘ったるいお菓子のような、子供じみた香りは、売れ行き順調だ。


胸を撫で下ろし、バックルームから商品を追加して並べた。

「チーフ、これまだかなり余ってますけど、どこに置きますぅ?」

一ヶ月前にアルバイトで採用した高橋は、どんどん香りを覚えて、お客様のイメージに合わせて選ぶのが上手い。

メンズの香りを女性に勧めるのがとくにセンスがあって、私も見習った。

「私、昔からずっとメンズのフレグランス選んでつけてたので、選ぶ人の気持ち、わかる気がするんですよね〜」

そう言ってまた、新しいお客様の接客にタイミングを計っている。


……ヤリ手だ。
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