私の中の眠れるワタシ
どの香りをもらっても、気に入らないという事はなかった。
彼にとって、『今の私の分身はこの香りだ』と教えてくれた事になる。
毎回違う香りを、君だと選ばれる度に、そうなのかと認識する。
彼にとって、今の私は、これ。
すると、身に纏った瞬間、新しい私と出会える気がした。
−−私は同じ一人なのに、彼達には別々。
その事実は、二面性がある私に、氷と炎を一度に送ったソウタを甦らせた。
「よく、プライベートの香り変えてますよね。」
仕事帰り、ロッカーで着替えている私に後輩達は声をかけた。
私は笑い、
「勉強のためよ。」
と言う。
決まった香りを長く使う佐原には、信じられないらしい。
……いろんな人がいる。
私は香りに常に思い出が覆いかぶさるようで、長くはつけられない。